奥多摩尾根歩き
カイキ尾根、鷹ノ巣山中尾根

(1/2)


今回は稲村岩尾根の中間あたりからカイキ尾根を下り、鷹ノ巣山中尾根を登りました。前回、巳ノ戸沢右岸尾根を登ったときの続きといえば続きです。
『花のひかり』(komado氏)の記事を大いに参考にさせていただいたんですが、カイキ尾根から小六谷への下降がかなりデンジャラスそう。ただ、17年以上前の記事なので現場の様子はかなりそーとー変わっている、と考えるのが妥当です。行ってみないことにはわかりません。で、行ってみてわかりました。めちゃめちゃデンジャラスでした。
以下、「命あっての物種」という言葉が何度か頭をよぎった記録です。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→稲村岩尾根の登山口→巳ノ戸林道分岐→(1時間15分)稲村岩分岐→稲村岩尾根→(1時間20分)稲村岩尾根1330m圏→カイキ尾根→(1時間10分)小六谷・金左小屋窪出合近く→(10分)金左小屋窪左岸尾根取付→金左小屋窪左岸尾根→(2時間40分)石尾根1650m圏→水根沢林道→(2時間40分)[GOAL]奥多摩湖バス停→JR青梅線奥多摩駅
(9時間15分)
歩いた日 2024年4月13日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→稲村岩尾根の登山口→巳ノ戸林道分岐→(1時間15分)稲村岩分岐→稲村岩尾根→(1時間20分)稲村岩尾根1330m圏→カイキ尾根→(1時間10分)小六谷・金左小屋窪出合近く


カイキ尾根稲村岩尾根の1330m圏から東へ下り、小六谷と金左小屋窪という沢の出合に没している尾根です。『奥多摩 登山詳細図(西編)』(吉備人出版)に名前が記載されています。
急降下があったり植林と自然林の境い目の尾根を下ったりするのは、フツーの尾根ではあるんですが、はたして小六谷にすんなり降ろしてくれるのか、この一点に関してカイキ尾根はフツーではありませんでした。

おはようございます。きょうも稲村岩は屹立しています。奥多摩駅前からバスに乗るとスマイリーTさんとばったり。久しぶりです。あーだこーだと話しているとすぐに東日原バス停。ハンギョウ尾根絡みの道を探索に行くというTさんとここで別れ、階段を降り、
日原川を巳の戸橋で渡り、
ロープをくぐります。
くの字くの字で登っていき、
ここはロープをくぐりません。道は平坦になり、巳ノ戸沢を見下ろしながら歩きます。
堰堤が見えてくるとまた登りです。
次の堰堤は稲村岩の横っ腹を守るようにそびえています。
堰堤から先は道はありません。
前回、左岸に見える登山道を歩いてはみたもののことごとく土砂崩れで分断されていたので、今回はずっと右岸側や沢を歩きました。
巨木の根本を這い上がります。
ここは沢をはなれて
高巻いたんですが、
これは失敗。危なっかしいトラバース(山腹水平移動)が続きました。しつこく沢を歩いたほうがラクです。前回の下山時は沢を歩きました。忘れてた。
ようやく、稲村岩尾根と巳ノ戸林道の分岐に着きました。
ここからは山道です。
くの字くの字でぐんぐん高度を上げて
きて、
あの鞍部が
稲村岩(正面奥)と稲村岩尾根(右)の分岐です。ちょっと休憩。
稲村岩尾根の初っ端。急登です。
右隣の巳ノ戸尾根
左はネズミササス尾根カラ沢尾根タル沢尾根タル沢右岸尾根山ノ神尾根が見えていると思うんですが、逆光のせいにしてよくわからないことにします。
小さなくの字くの字で登ってきて
道がわかりづらくなって、いくつもの赤テープが混乱に拍車をかけているゾーンを抜け、
前回、登ってきた巳ノ戸沢右岸尾根と合流すると、
すぐに標高1030m圏(以降「標高」は省略)のカイキ尾根のてっぺんです。根っこがベリリと剥がれた木が尾根上に倒れています。
『奥多摩』(宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19 国立国会図書館蔵)の6ページより引用。気になるカイキ尾根という名前の由来は書かれていませんでした。
せっかく天気がいいのでカイキ尾根のてっぺんからの景色を西から右回りで
ぐるーっと
撮って
みま
した。ザックを降ろして休憩します。「SOYJOY ブルーベリー」を半分かじり、ペットボトルに詰めてきたほうじ茶を飲んで、ずり下がったズボンをズリ上げて、意味なく腕をぶんぶん振り回したりして、ザックを背負い、杖をつかみました。
めざすカイキ尾根は根っこがはがれた木の梢が指す方向です。
幅広の尾根で始まります。
角が丸くなった古そうな標石が埋まっていました。水道局のものでしょうか。ぽつりぽつりと続きます。
正面にネズミサス尾根、右下に鷹ノ巣山中尾根が見えています。
そこそこの急降下が続きます。
1190m圏で左にくっと曲がって
左植林、右自然林の急降下になりました。そういえばつい最近まで雑木林と自然林は同じだと思っていました。雑木林って人が手を入れた人工林なんですね。
どんどん下ります。
下ってきて
急降下です。カイキ尾根を下り始めてすぐに水の音が聞こえていたんですが、だんだん大きくなってきました。右手の小六谷の音です。
二重稜線は右へ。
1040m圏で大木(根本に杖を立てかけています)にぶつかると
左手には標石が2基が並んで埋まり、ちょっと離れた場所に太い赤帽黒杭が1本刺さっています。
その先にそこそこしっかりした作業道がのびていました。どうやら登ってきた稲村岩尾根のどこかまでつながっているらしい。反対側の大木の向こうに道はなく、小六谷に向かってビシッと切れ落ちています。
ははーん、カイキ尾根は「帰り尾根」だったんだな。仕事道はここで終わり、あとは帰るだけ。「かえり」→「かいき」の転訛があってもおかしくはありません。
妄想はともかく、すぐ先の尾根の地形はちょっと雰囲気が違います。
整地されたような平坦な場所があり、小屋が建っていたんじゃないでしょうか。
右手の小六谷を覗き込んでみます。水の音は聞こえるんですが水面はまったく見えません。深い谷です。
正面にはめちゃくちゃ急峻な斜面に白い筋が見えます。じーーーっと目を凝らしてもなんなのかよくわかりません。滝なら大瀑布です。けれども水が流れているようには見えません。雪に1票。
この先はデンジャラスなにおいがぷんぷんします。地形図を見てもここから谷に降り、鷹ノ巣山中尾根に取付ける気がしません。命あっての物種です。引き返します。
どれがそーなのかはっきりしない鷹ノ巣山中尾根をグッとひと睨みし、
小六谷に降りられそうな場所を探しながら登り返し、ここから下ることにしました。1010mあたりです。忌山尾根から巳ノ戸谷への下降やタル沢左岸からタル沢への下降を彷彿とさせます。
足がかり手がかりがあって1度でも傾斜のゆるそうなルートを探ります。命あっての物種です。必死に探ります。
あの子尾根の向こうが平穏であることを願いつつ、のっぺり斜面の落ち葉に足を突っ込みながらじわりじわりと近づきます。
斜めに下ってきて
小尾根に立ちました。右手に小六谷の流れが見えましがまだずっとずっと下です。
小尾根を下ります。突端近くは身動きが取れなさそう。
右に下ります。滝が見えました。滝の下に降りたら万事休す。これまた身動き取れそうにありません。トラバース気味に右へ右へ、上流へ上流へ移動しながら下ります。命あっての物種です。
トラバースしてきて
前方下にワサビ田跡が見えてきました。見事な石積がつらなっています。
河床までもう少し。落ち葉ゾーンを抜けて土がむき出しになったちょっと先なら安全に降りられそうです。
決死のトラバースを終え、
ようやく小六谷に降りてきました。これにてカイキ尾根はおしまいです。カイキ尾根鷹ノ巣山中尾根の下端はもう少し下流ですが贅沢はいってられません。命あっての物種です。
対岸に渡り、石積の上で休憩します。次は鷹ノ巣山中尾根なんですが、さて、いったいどこから取付けばいいんでしょ。

カイキ尾根から小六谷への下降。下降点から小六谷や鷹ノ巣山中尾根下端のようすを簡単にまとめた動画です。