奥多摩尾根歩き
ナギ谷オキ尾根


今回はナギ谷オキ尾根(なぎたにおきおね)を登り、天祖山(てんそざん)から表参道を下りました。
ナギ谷オキ尾根は天祖山のちょっと北にあるナギ谷ノ頭(1671m)をてっぺんにして南西に延び、長沢谷(ながさわたに)とナギ谷という谷の出合いに落ち込んでいる尾根です。以前に歩いた二軒小屋セド尾根はナギ谷を挟んで南にあります。下調べでは長沢谷の河床を歩き、出合い地点にドンとあるでっかい岩からナギ谷を少し上流に登ってナギ谷オキ尾根に取り付くのが順当なルートのようでした。
ところがです。日原林道の終点(現状の)から長沢谷へ下降できるところを探しながら左岸をトラバース(山腹横断歩き)していくと、ナギ谷に着いてしまいました。道中は赤テープが続くものの、股間がキュンとなる場所が何カ所かあるちょっとデンジャラスな道です。
ナギ谷から目当てのナギ谷オキ尾根に這い上がったのはいいんですが、わたくしはそのままトラバースを続けるという失敗をしてしまいました。原因はスマホGPSの操作ミスとスマホGPSへの妄信です。
なんとか辿り着いたナギ谷オキ尾根は急登続きで序盤の無駄な体力消耗もたたり、早々にグロッキーに。正直、風景を愛でながら楽しむ状況ではなかったけれど、木々の美しさと奥多摩のしっとりとした森の匂いが体に染み入る印象深い尾根歩きでした。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→(50分)八丁橋→(1時間50分)日原林道終点→(1時間)道迷い→ナギ谷オキ尾根→(2時間50分)ナギ谷ノ頭→(20分)天祖山→(1時間50分)日原林道→[GOAL](40分)東日原バス停→JR青梅線奥多摩駅
歩いた日 2019年8月3日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→(50分)八丁橋→(1時間50分)日原林道終点→(1時間)道迷い→ナギ谷オキ尾根→(2時間50分)ナギ谷ノ頭→天祖山→(1時間50分)日原林道→[GOAL](40分)東日原バス停


ナギ谷オキ尾根は取り付きまでがちょっとヒヤヒヤで、しかも道迷い。急登続きで展望もほとんどありませんでしたが、木々の姿が美しい獣臭漂う秘境の尾根でした。

おはようございます。東日原バス停を出発して路面の「吉」みたいな「+10」を見ながら林道日原線を目指します。
小川谷橋(おがわだにばし)を渡って左折、林道日原線(以降、日原林道)に入ります。長ーい林道歩きの始まりです。
バス停から約50分で八丁橋の手前にある広場に到着。
右手には孫惣谷林道へ続くオロセ橋。当初の予定ではここに帰ってくるはずでした。
八丁橋を渡り、天祖山への登山口を過ぎ、そのすぐ先のゲートを越えます。この写真を撮ったときはここに下山してくるとは思ってもみませんでした。
道中、何カ所も冠水していました。
夏雲! と呼ぶにはちょっとまだ力不足でしょうか。モクモクというよりはホクホクみたいな感じです。
ヤケト尾根の取り付きへの下り口を通過。
ツバノ尾根の取り付きへの下り口を通過。
「ヒノキ尾根」という尾根があるようです。おそらく以前に歩いた松尾尾根の支尾根です。
名栗沢橋(なぐりさわはし)を渡ります。
以前、あの階段から赤石尾根を歩きました。
この先、工事中のようです。
ドライブインみたいな工事現場です。
富田新道(野陣尾根)への入口でした。
赤石尾根下端の崩壊地を復旧する工事のようです。
以前、あの白い看板から二軒小屋セド尾根に登りました。
通行禁止になっている大ダワ林道入口を通過します。
そーとー歩きましたが、スクーターが停められた先に新しげな道がまだ延びています。
長沢谷を見下ろしながら河床まで下りられそうな場所を探します。ですが、長沢谷はあんな遠くにボツりと流れを見せているばかりで。
ついに林道のどん詰まりに着きました。文字通り道半ばという雰囲気で、先に延びる気マンマンの終端です。
終端の先をうかがうと、道らしい道が延びていて赤テープも見えます。ここでザックから軍手と黄タオル、杖を引きずり出して正装。水を飲んで出発です。
いきなりノッペリした道です。ちょっと怖かったです。小川谷林道の先の山道と雰囲気が似ています。
こんな道が続き、
尾根を削ったような広場に出ました。
尾根の先に赤テープがあったのでそちらに向かうと、谷への劇下りです。こんなところはとてもじゃないけれど下りられません。
右手に道が続いています。
ノッペリ感が増しました。
谷に下りたほうが安全な気がしたんですが、わたくしには無理。
ビビっていたところ、木と木の間にロープが渡されていました。これならなんとか先に進めそうです。やっぱり小川谷林道の先の山道に似ています。ひょっとしてこのロープもM氏の仕事じゃないでしょうか。感謝です。
慎重に進みます。
大きく高巻く場所もあります。ちょっとハードです。
落ちたらどっかに引っかかるかな、運良く引っかかってもその後どうすればいいのかな、などと思いながら先に進みます。
ノッペリ感はありますが、このあたりは斜度はそれほどでもないのでまーまー普通に歩けます。下山してからふと思ったことですが、ズーッと続いていた赤テープは林道建設のための測量用じゃないでしょうか。そーとー奥まで林道は延びそうです。
あの小尾根を乗り越すと、
長沢谷とナギ谷の出合いが眼下に見えました。
小尾根の下端に沿って長沢谷が大きく湾曲しています。このあたりがオンマワシでしょうか。『多摩川源流部の沢・尾根・淵・滝・小字等の 地名と由来に関する調査研究 ―奥多摩編― 』(2005年 中村 文明 多摩川源流研究所 所長)にオンマワシに関して「沢が大きく蛇行し、S字状になって流れ下っていた。水が大きく廻る様をこの様に呼んでいた」とあります。確かに出合いから小尾根の回り込みあたりは、逆S字ですが大きく2回にわたって湾曲しています。
テキトーにナギ谷に向かって下り始めます。
この正面が目当てのナギ谷オキ尾根です。
あのあたりでナギ谷を徒渉して、
あの急斜面を這い上がります。
徒渉といってもわたくしのそこそこ短い脚でもまたげる水量でした。
下流(長沢谷との出合い)方向。つまりナギ谷オキ尾根の下端方向です。
上流方向。前出の『多摩川源流部の〜』にはナギ谷は「ナギの谷」として「(長沢谷の)左岸にある崩壊の激しい谷。平地を見つけてはワサビが植えられていた が、鹿にやられて作らなくなった」(かっこ内はわたくしの加筆)とあります 。
ここを這い上がります。
登ってきました。
ナギ谷オキ尾根に乗りました。下に見えているのは長沢谷です。
これは尾根の下端部をのぞいたところ。
これは尾根を見上げたところ。
ここで痛恨のミスです。ナギ谷に下りる前にスマホGPSで位置を確認したとき、位置情報の取得をオフにしてしまったのに気付かず、一応念のためと再度スマホGPSで位置確認をしました。当然、スマホGPSの表示はまだナギ谷オキ尾根の手前です。わたくしは「アリャ」とか思って、さらにトラバースを続けてしまいました。ですからこれからしばらくはナギ谷オキ尾根には不要な記録です。
ベリッとはがれた木の根っこを通過して、
ノッペリした道を歩いて、
あの尾根がナギ谷オキ尾根かな、などと思いながら、
尾根に乗って尾根筋を見上げ、
下方を撮影し、
ミズナラかなあ、と大きな木を撮影し、ここでスマホGPSを確認。位置が動いていないことに気付かず、またまたトラバース開始。
4本のワイヤーロープが張られている場所を通過して、向こうに見えているのがナギ谷オキ尾根だと思いながら歩き、
「この尾根だよね」とスマホGPSを確認したときに、やっと「なんかヘン」と思ったわたくしでした。スマホGPSが衛星電波を拾っていないことに気付き、位置情報取得をオンに。歩いた軌跡がピュッと直線で延びてナギ谷オキ尾根を通り越していることが判明。
斜め上にトラバースしながら引き返します。あの尾根がナギ谷オキ尾根のはずです。
なんとかナギ谷オキ尾根に乗りました。時間も体力もそーとーロスしてしまいました。割れた一升瓶が散らばった『ソウ』みたいな場所を通過します。
すぐ上に小屋跡がありました。鍋が半分埋まっていたので掘り起こして石の上に載せました。なんの意味もありません。
さらにその上に小屋がありました。こちらはしっかり建っています。
小屋の長椅子で休ませてもらいました。アリジゴクを眺めながら水を飲んで塩飴をなめました。
小屋から先はこんな感じ。ヒノキの植林帯です。
アディオス! 小屋!
ゴツゴツしたところを通過。
1336mのピーク直下で立派な作業道が尾根を横切りました。
左(北)方向の道はあまり判然としません。
アセビの森です。
登ります。
登ってきて、
登っていると、黄色い樹脂を頭に載せた石杭が埋まっていました。
道中。
キツいです。バテバテです。
木々の緑を眺めながら何度も休憩します。
1450m圏で出来たばかりっぽい作業道が出現。くの字くの字で延びています。
滅茶苦茶歩きやすい作業道をしばらく歩いたんですが、この先は尾根をどんどんはずれていくようです。未練はありますが、左へ登り、尾根筋に戻ります。
再びキツい尾根歩きです。
登ってきて、
登ります。
わたくしがナギ谷オキ尾根で見たいちばん大きな木。ミズナラでしょうか。
こんなところを歩いて、
この緩斜面を登ると、
ナギ谷ノ頭に到着です。天祖山の登山道と合流します。これにてナギ谷オキ尾根はおしまいです。
あちらから登ってきました。
実は当初の計画ではナギ谷ノ頭から長沢背稜に向かって梯子坂ノクビレまで歩き、そこから水源林巡視路で孫惣谷林道に下るつもりでした。ですが、そこそこ困難が予想されるコースを歩くには時間的にも体力的にも無理と判断。天祖山を経由して日原林道に戻ることにしました。ナギ谷ノ頭から右(南)へ、天祖山に向かいます。
こんなところを登って、
天祖山(1723.25m)のてっぺんに建つ天祖神社に到着。天祖山には三等三角点があって、基準点名は白石山。天祖山は明治になって付けられた名前で、それまでは白石山と呼ばれていたらしいです。ここから先は以前も歩いている(二軒小屋セド尾根、松尾尾根/天祖山中腹道)ので省略します。

と書きましたが、きょうはまったく遠くの景色を見ていないので、1350mあたりにある天祖山雨量局(ロボット雨量計)から遠くを眺めてみました。

日原林道が見えてきました。
これにて尾根歩きは終了です。山の神様、地権者の皆様、ありがとうございました。
アディオス! 奥多摩の男(ひと)。