奥多摩尾根歩き
伊豆ヶ岳東尾根、殿入谷右岸尾根、子ノ山北尾根(ちょっと)

(1/3 伊豆ヶ岳東尾根)


今回は伊豆ヶ岳東尾根を登り、殿入谷右岸尾根を下りました。遠征です。尾根の名前は『新装版 奥武蔵 登山詳細図』(吉備人出版)によります。ちなみに『山と高原地図22 奥武蔵・秩父』(昭文社)には「バラガ平尾根伊豆ヶ岳東尾根)」という文字はありますがルート記載はなく、殿入谷右岸尾根は文字もないんですが、「トノ入ヤツ」という谷の名前は記載されています。でもって『詳細図』にはこの谷の名前は「殿入ヤツ(戸ノ入)」と記載されています。でもってもって「トノ入ヤツ」は「殿入谷津」という表記もあるようで「殿入谷右岸尾根」は「殿入谷津右岸尾根」の誤記なのかと思いきや「谷」は「やつ」と読むこともあるようで、でもってもってもってこれはこれでいいのかな、と思う次第です。ということで「殿入谷右岸尾根」は「とのいりやつうがんおね」と読むことにします。
実は、かなり長いあいだずっと伊豆ヶ岳という文字を目にしたとき「伊豆半島の主みたいな山なんだろうな」と思っていたんですが、ある方からのメールで奥武蔵の山だと知って軽く驚きました。3か月半ほど前のことです。で、なんとなく調べてみると、グニョグニョしたりエイのしっぽみたいにシュッとヤセたりして尾根の形が面白いルートが見つかったのでいつか歩いてみようと思っていた山域です。
順調に登って下るとたいして時間はかかりそうもないので、殿入谷右岸尾根を下ったあとに近在の子ノ山(ねのやま)にある子ノ権現天龍寺に寄ることにしました。子ノ権現天龍寺へは林道を途中ではずれ、谷沿いを歩き、道を見失い、子ノ山の北に下っている尾根に這い上がるというこじれた尾根歩きになってしまいました。最近、坐骨神経痛(多分)で左尻から左膝の裏や表までがときどきビリビリズンズンと激しく痛みます。子ノ権現天龍寺は「足腰守護の仏様」らしいのでご利益にも期待です。
コース [START]西武鉄道西武秩父線西吾野駅→森坂峠→(50分)伊豆ヶ岳東尾根取付→伊豆ヶ岳東尾根→(2時間50分)伊豆ヶ岳→(10分)殿入谷右岸尾根へのトラバース開始→殿入谷右岸尾根→(1時間50分)観音堂→子の山林道→謎の道→子ノ山北尾根→(1時間10分)子ノ権現天龍寺(見晴台、御守り購入)→関東ふれあいの道→(1時間30分)[GOAL]西武鉄道西武秩父線吾野駅
(8時間20分)
歩いた日 2022年12月26日(月)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

[START]西武鉄道西武秩父線西吾野駅→森坂峠→(50分)伊豆ヶ岳東尾根取付→伊豆ヶ岳東尾根→(2時間50分)伊豆ヶ岳


伊豆ヶ岳東尾根は伊豆ヶ岳から東に下り、久通川(くずうがわ)という川に架かる日用橋(読み方不明)あたりが下端の尾根です。下端近くにはGoogleマップによると「馬頭観世音」があります。できるだけ下端から登ってみようと取付けそうな場所を探してGoogleマップのストリートビューでうろうろしたんですが、「ここ」というポイントは見つけられずじまい。現場で探るしかありませんでした。
地形図を見ると伊豆ヶ岳東尾根は針葉樹林の記号にほぼ覆われていて植林のなかの尾根歩きかなと思っていたんですが、ところがどっこい、上部は葉を落とした雑木林でとても明るい尾根でした。
雑木林は頂上直下のとんでもない急坂にぶつかります。急坂というよりは崖です。なんとか這い上がると、次がありました。 ロープが垂れた標高差40mほどのやっかいな崖です。必死に登りきると、たくさんの賽銭に囲まれた小さな大国さまが座っている伊豆ヶ岳の頂上でした。

おはようございます。西吾野駅です。キュートな駅舎です。
駅前からドーンと山が見えます。本陣山(ほんじんやま)らしいです。伊豆ヶ岳は本陣山にすっぽり隠れています。まずは本陣山の左に下る稜線の鞍部にある森坂峠をめざします。
ヘアピンカーブを下って西吾野橋を渡り、
国道299号を渡り、左へ。ガソリンスタンドを過ぎ、
右手奥の高麗川(こまがわ)に架かる白い橋を渡ります。橋の向こう側にはゲートがあり、端からすり抜けると
こんな道をてくてくと歩きます。林道小床線という林道らしいです。
バンと開けた伐採地に出ました。右手の草原に
踏み跡がのびていて
やがて山道になります。
オシャレな道標が木にくくりつけられていました。
グーッと登り、
森坂峠に着きました。右は本陣山、左はイモリ山の稜線です。
峠を越え、
そこそこ勾配のキツい峠道を下ります。
いくつかの枡を通過し、
人家が見えてきました。
舗装道路に出ると右へ。道路の向こう側に道標が立っていました。
伊豆ヶ岳東尾根の末端が見えてきました。
日用橋を渡ります。真正面に伊豆ヶ岳東尾根です。
Googleマップに記載のある馬頭観世音です。この梯子から取付けそうでしたが、車の往来が多く、石や土砂はもちろん落ち葉でも落としてしまうと事故の原因になりかねないのでここはパス。
ちょっと左に進み、この原っぱから取付くことにしました。
獣なのかヒトなのか両方なのか、薄い踏み跡が見つかり、
テキトーなところから稜線をめざします。
伊豆ヶ岳東尾根に乗りました。下端方向。右下に道路が見えます。
尾根歩き開始です。
でっかい木を通過します。青々とした(緑ですが)葉っぱをつけていました。
右から登ってきた尾根と合流します。
すぐにこんなしっかりした尾根道になりました。ちょっと意外です。
琴平神社に着きました。
朝食代わりの「直火釜 おいも ようかん」を食べてちょっと休憩。
しっかりすっきりした尾根道から
枝打ちされて落ちて枯れた枝葉に囲まれた尾根道がずっと続きます。
410mあたりで尾根道は平坦になり、左にクッと曲がります。
すぐにまた左にクッと曲がります。伊豆ヶ岳東尾根はグニョグニョクネクネした尾根です。
400m圏の小ピークです。ここで尾根は分岐しています。登っているから高みをめざせばいいようなものなんですが左右に下っているので始末が悪いです。右の尾根を下ります。
鞍部からの登りです。右手に林道が見えます。
登ってきて
右から登ってきた尾根と合流し、左にクッと曲がります。
鞍部からのやや急登です。ここでも右手に林道が見えました。
登ってくると
右から登ってきた尾根との合流点で、「狢入山」と書かれた柱にドラえもんが巻きつけられていました。520m圏です(確かそれくらい)。
右から合流した尾根。通せん坊がありました。
合流点で左にクッと曲がり、おだやかな尾根道が続きます。
「物見台」と書かれた赤テープがひらひらしている小ピークを通過し、
すぐに標高542m(以降「標高」は省略)の標高点あたりを通過、と思ったんですが物見台が気になります。引き返して
物見を期待したんですが、この通り。展望はほぼありませんでした。
1分間ほど、左手が雑木になりました。
樹間の眺め。
右から登ってきた尾根との合流点に向かってキツい急登が始まりました。
登ってきて
登ります。右手が雑木になりました。今度は3、4分ほどの区間です。
森林公社の標石を通過し、右からの尾根と合流します。
合流した630mあたりからほぼ東方向の眺め。
合流してから右手がずーっと雑木になり、明るい雰囲気の尾根歩きになりました。
右が伊豆ヶ岳。左は古御岳(こみたけ 小御岳、古伊豆)という山のようです。
このあと下る殿入谷右岸尾根が見えているような見えていないような。
いつの間にか雑木と植林が反転して尾根はぐっとヤセました。
660mあたりで右から登ってきた尾根と合流。左にクッと曲がります。
670mの標高点らしきポイントを通過します。とくになにもない、ということはなく、
立派な標高点板(?)とのび太のフィギュアが木にくくりつけられていました。この標高点は尾根の分岐になっています。右へ。
伊豆ヶ岳の山頂がはっきり見えてきました。
少しのあいだ植林に囲まれ、
ガラリと尾根相が変わりました。650m圏です。
こんな岩がちな尾根はすぐに終わり、
裸木が立ち並ぶすっきりとした尾根になりました。あの先で右から登ってくる尾根と合流します。
登ってきて
登り、
尾根は岩ヤセになったりもします。
760m圏でようやく右から登ってきた尾根と合流です。左からも尾根が登ってきていました。
合流点からの眺め。
合流点でやや左に進路が変わり、そこそこの急登が始まります。
グーッと登ってきて
鞍部に下っていくと
バーンと急登が立ちふさがりました。写真ではよくわかりませんが、崖みたいです。左に巻道がのびていましたがここを登らないと後悔しそうな気がします。
左手の巻道の方向。殿入谷右岸尾根が見えています。とんでもない勾配です。あそこは下らないのが吉です。
崖に取付き、そーとー登ってきたと思って見下ろしたらほんのちょっぴりでした。とほほ。
見上げます。傾斜はさらにキツくなっていくように見えます。
まるで取っ手のような木の根っこ。こんなんなんぼあってもいいですからね。
ルーツファインディング(根っこ探し)しながら這い上がっていきます。
登ってきて(切れ落ちていて下まで見えていませんが)
大木の横をすり抜けると
また崖にぶつかりました。上のほうに赤いロープが見えています(斜めに横切っているのは細い倒木です)。
ロープまで登ってきました。手がかり足がかりはたくさんありそう。
登ってきて
次のロープです。
登ってきて
次のロープです。
ロープが終わり、登ってきて
踏み跡をたどると大国さんの小さな像が座っていました。山頂の一角です。これにてグニョグニョした尾根と2連の崖に遊ばれ遊んだ伊豆ヶ岳東尾根はおしまいです。
伊豆ヶ岳の山頂には三等三角点(写真左下。ちなみに大国さまは三角点の上、ちょっと右に見えています)があります。標高は850.90m、基準点名は伊豆岳。「三角点からは奥多摩の山々、武甲、大持、小持、武川岳。遠く丹沢山塊がかすむ。いまはないが、その昔、この山頂には虚空蔵菩薩、大日如来、大山祇の三体の尊像が安置されていて、伊豆ヶ岳を虚空蔵岳ともいったいう(原文ママ)。また伊豆ヶ岳は、私たちがこれから辿る子ノ権現の奥の院であるとも『秩父志』は述べている」(『関東百山』160-161ページより引用。実業之日本社 浅野孝一 ほか 1985)。
切り替え画像は伊豆ヶ岳の名前の由来に関する案内板です。いずれでしょうか。
南北に細長い山頂です。「ここはやや広く、昔からある茶店が季節には店を開いていて、弁当を広げるのによい所だ。晴れれば、東方はるかに筑波山、北方に目を転ずると、武甲山の背越しに谷川連峰のあたりが、又南方遠く、丹沢、奥多摩の山々が一望の内におさめられる景観は実にすばらしい」(『山 第192号』63ページより引用。朋文堂 1952)。
そんな山頂のあちらこちらかの眺めです。
けれどもあまり馴染みのない
山域なのでただ写真を並べることしかできません。確かにずいぶん遠くまで見通せます。おそらく歩いたことのある尾根がいくつか見えているんじゃないでしょうか。帰宅後に思い出したんですが、「山にかざせば山の名前がわかる」というアプリ「AR山ナビ」をスマホに入れていました。使ってみればよかった。残念。
左手前のもっこりとした尾根が登ってきた伊豆ヶ岳東尾根で、その右隣の右から左に下っている尾根が殿入谷右岸尾根です。遠景の中央やや右のとんがって見えるピークは子ノ権現天龍寺の建つ子ノ山だと思います。