奥多摩尾根歩き
忌山尾根、キリンボ尾根

(2/2)


巳ノ戸谷→キリンボ尾根→(4時間)稲村岩尾根→鷹ノ巣山→石尾根→(4時間10分)[GOAL]JR青梅線奥多摩駅


キリンボ尾根は雪で全貌がよく見えないこともあって巳ノ戸谷からいちばん傾斜のゆるそうな支尾根に取付きました。本尾根は急登の連続。雪は断続的に降り、チェーンスパイクは踏んだ雪を圧縮して固まり積み重なり、すぐにぽっくり下駄状態になるのでザックにしまいました。雪化粧の尾根はそれはそれで見応えがあるんですが、「素顔の君が見たい」などと思いながらルーツファインディング(登攀を支持する木の根を探ること)で軍手をドロビチャにしながら薄っすら汗をかいて激登は続くのでした。

巳ノ戸谷はかんたんに渡れました。目の前の山肌を見回してどこか取付きやすそうな場所を探します。ちょっと下流のキリンボ尾根の本尾根方向に傾斜のゆるい小尾根が見つかりました。あの尾根に向かいます。
巳ノ戸谷からキリンボ尾根に向かってもワイヤーが張られていました。
ワイヤーをくぐり、土が見えている場所から登ります。
巳ノ戸谷からコンパス短めのトレースを残して登ってきて
ゆるい傾斜を探りながら登ります。
支尾根に乗りました。先程のワイヤーがモコッとした段差に立っている木につながれていました。
支尾根を登ります。右下に巳ノ戸谷が見えます。
どんな山肌かわからなくなってきましたが、かなりの急登なのはよくわかります。
ここにもワイヤーが残されています。
1060mくらいでようやく左から登ってきた本尾根と合流。
キリンボ尾根は錐ン棒尾根で、錐の棒部分の材料にバッチグーなヒノキが伐り出された尾根らしい。『奥多摩』(宮内敏雄 昭和刊行会 昭和19)には「(前略)錐ン棒出ツ先ノ尾根と呼ばれ、此の尾根には錐棒に用いる良質な檜が多いのでこの名があるといふ」(18ページ)との記載があります。この切り株がヒノキなのかどうかわかりませんがキリンボ尾根には大きな切り株があちらこちらに突き出ています。
登ってきて
登るんですがすでに足の動きはのろく重く、
アセビの中に入るとすぐに右から登ってきた尾根と合流し、ようやく傾斜はゆるみました。1280m圏です。
けれどもやはり足の動きはのろく重く、チェーンスパイクにくっつく押し固められた雪は文字通り重く、このあたりでチェーンスパイクは脱いでしまいました。
素靴は滑りやすいけれどチェーンスパイクに固まった雪を蹴り飛ばしたり岩に打ち当てたりして崩し取る必要がなくなり、プラマイゼロといったところ。物理的に軽くなった足は体力的には残念ながら重いまま。
1320m圏で右から登ってきた尾根と合流し、
尾根はさらにヤセ気味になって平坦に。
獣の足跡を追っていると
尾根は広がってきて
獣の足跡たどりながらテキトーに登っていきます。
広がった尾根はなんとなく右手の尾根に絞り込まれていって
ヒトがぴったりはまりそうな大きな洞を通過したりもします。
鷹ノ巣山が正面にぼーっと見えています。「あんなところまで登るの?
 見なきゃよかった」って思っています。
急登が続いています。写真を撮る余裕もなく、あえぎあえぎ登ります。見えている石はほとんど浮石で雪に軍手を突っ込んでかき回してのルーツファインディングはなかなかの苦行です。軍手に張り付いた雪はバンバンと柏手を打って弾き飛ばします。
グシャッとした倒木を回り込みます。
空が低い位置に見えてきて、
かなりゆるやかになった平地のような尾根をズボリズボリ歩いていくと
鷹ノ巣尾根にぶつかりました。
右に進むと鷹ノ巣山山頂からの景色がどーん
よりです。なんにも見えません。
あちらから山頂に出てきました。これにてキリンボ尾根はおしまいです。
焦点の定まらない空間を眺めながら下山ルートを考えます。時刻はすでに16時20分。時間的に早く下山できるのは当初の予定の稲村岩尾根ですが、途中で17時の日没を迎えるのは必至。急降下の多い尾根はデンジャラスです。
どうせ日が暮れるのならと石尾根を下ることにしました。時間はかなりかかりますが、迷いそうな道もなく、幸いなことに薄いけれどもトレースが消えずに残っています。ザックからヘッドライトを引っ張り出し、ポケットに入れて出発します。
19時近くまではヘッドライトなしで登山道をたどることができました。ごく淡いオレンジ色にぼんやり光る空にカメラを向けたんですがちょっと記憶と違います。
六ッ石山の麓の六ッ石に囲まれた祠を通過します。
とても怖かった桟道。桟道は隙間だらけで歩けそうになく、右下にロープの下がった巻き道がありました。この道が粘土質で滑るのなんのって。怖かったです。
階段をおりてきて長かった石尾根はおしまいです。
奥多摩駅の明かりが見えてきました。
山の神様、地権者の皆様、きょうもありがとうございました。過酷な尾根歩きから無事、帰ることができました。また、よろしくお願いします。ついでにお願いですが、奥多摩のコンビニを20時30分くらいまで開けていただけないでしょうか。缶ビールを買えずに膝から崩れ落ちそうでした。