奥多摩尾根歩き
悪谷右又窪右岸尾根

(悪谷右又窪右岸尾根、ヨコスズ尾根)


今回は悪谷右又窪右岸尾根を登り、ヨコスズ尾根を下りました。
悪谷右又窪右岸尾根はその名前の通り、悪谷(割谷)の右又の右岸にある尾根です。日原の深部を流れる酉谷(とりだに)の左岸に流れ込んでいる悪谷という谷がその上流で二又に分かれています。下流から見て右の谷は右又窪と呼ばれていて、左の悪谷の支流的な立場のようです。その右又窪の右岸の尾根が悪谷右又窪右岸尾根で、悪谷と右又窪に削られてできた尾根です。てっぺんは長沢背稜(ながさわはいりょう 都県境尾根)の1595m標高点です。
『多摩川源流部の沢・尾根・淵・滝・小字等の地名と由来に関する調査研究 奥多摩編』(2005年 中村文明 多摩川源流研究所 所長 著 財団法人とうきゅう環境浄化財団 発行)によると悪谷について「(酉谷との)出合いから150m近く両岸が絶壁の谷が続く。滝有り淵有りの悪場から、この名前が付いた。別名は割谷(ワレタニ )。大地が真っ二つ に割れたような地形からそう呼ばれた」とあります。けれども悪谷の読み方がわかりません。頭のなかでは「わるたに」と読んでいます。
ヨコスズ尾根は長沢背稜の天目山(てんもくざん 三ツドッケ)から南西に下って中日原あたりの日原川に没しています。登山道は東日原バス停の近くに降りているのでよく歩かれている尾根だと思います。

コース
JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→(2時間)小川谷林道終点広場→小川谷左岸登山道→(40分)三又→酉谷悪谷出合→石楠花尾根→(1時間10分)割谷二又→悪谷右又窪右岸尾根→(1時間20分)1595m標高点(長沢背稜)→(1時間20分)一杯水避難小屋→(1時間30分)[GOAL]東日原バス停→JR青梅線奥多摩駅
(8時間)
歩いた日 2021年3月27日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→(2時間)小川谷林道終点広場→小川谷左岸登山道→(40分)三又→酉谷悪谷出合→石楠花尾根→(1時間10分)割谷二又→悪谷右又窪右岸尾根→(1時間20分)1595m標高点(長沢背稜)


悪谷右又窪右岸尾根は石楠花尾根(しゃくなげおね)の裾を回り込んだり悪谷をさかのぼったり、取り付くまでにかなりのエネルギーを消耗する冒険でした。悪谷右又窪右岸尾根はザレた急登に始まりザレなくなっても急登は残って、明るいミズナラの尾根を登っていきます。

おはようございます。奥多摩駅から東日原駅バス停にやってきました。稲村岩(いなむらいわ)です。左にせり上がる稲村岩尾根はまだ通行禁止のままです。
小川谷橋(おがわだにばし)を渡って右折。一石山神社(いっせきやまじんじゃ)、日原鍾乳洞(にっぱらしょうにゅうどう)、日原燕岩洞門(にっぱらつばめいわどうもん)を通過し、林道小川谷線(以後、小川谷林道)へ。
ウトウの頭などを眺めて
小川谷林道の終点広場に到着。
終点広場にある案内板です。酉谷の左岸に流れ込む悪谷が「ワル谷」と表記されています。大京谷(だいきょうだに)は滝谷(たきだに)とも呼ばれています。前出の『多摩川源流部の沢・尾根〜』には「三又(みまた)とは、大京谷、酉谷(中沢) 、悪谷の三つの谷を意味するが」と書かれています。ますはその三又を目指します。
終点広場の奥に進み、小川谷左岸登山道に踏み入ります。
土砂が押し寄せて狭くなった擁壁の上を歩き
ロープをつかみながら第一の崩落地を通過しました。
ドザーッと小川谷に向かって崩落している場所です。
第二の崩落地を通過します。
第三の崩落地を通過します。
沢から下ってきた斜面を見上げたところ。ロープが張られています。
通過中。
谷から上がってきました。
小川谷を見下ろしながら落ち葉の積もった山道を進み、
三又に到着です。
腹ごしらえをします。メニューは焼きたらこ入りのおにぎらずと「おやつラーメン」。
変形したおにぎらずを握って丸いおにぎりにしました。食後の白湯を飲んで出発します。
酉谷(左から手前への流れ)を上流に向かうとすぐに悪谷(右からの流れ)との出合です。正面は石楠花尾根(しゃくなあげおね)。悪谷を遡上する技術はないのでまずは石楠花尾根に取り付き、悪谷の右岸をトラバースして右又窪の出合まで行こうという魂胆です。地形図を見ると悪谷の左岸(ゴンパ尾根)はとんでもなく等高線が詰んでいますが、右岸の石楠花尾根の裾を回り込めばなんとかなるはずです。詳述はされていませんがそのようなルートで悪谷右又窪を歩いた記録を一件だけ見つけました。なんとかならなければ石楠花尾根に這い上がって降参する腹づもりです。
酉谷と悪谷の出合。
悪谷の上流方向。地形図通りに左岸(ゴンパ尾根)はほぼ垂直です。
悪谷を飛び石で渡り、石楠花尾根に取り付きます。
ザレた急登です。ただ、この石楠花尾根がターゲットではないのでできるだけ直登しようなどという小さな野心の必要はなく、右に斜上していきます。
薄ーい踏み跡を発見。おそらく獣道と思いますがそんなことはどうでもいいんです。安全に楽に移動できればそれでいいんです。
登ってきました。右下が酉谷と悪谷の出合です。
小尾根を乗り越すところで踏み跡はいよいよ不鮮明に。斜度もキツくなりそうなので
石楠花尾根の横っ腹を斜上し、少し高い場所をトラバースすることにします。
大きなサルノコシカケが生えた大きな倒木をくぐります。
また薄ーい踏み跡を発見。たどります。
また消失しました。
石楠花尾根を登りかけたんですが、
谷を見下ろすとなんとなく踏み跡らしきものが見えました。あの踏み跡らしきまで下って進退窮まった場合、登り返すのはかなりキツいです。ちょっと迷いましたが、まだ体力、気力ともに余裕はあります。
踏み跡らしきものは谷まで下っています。ままよ! と
谷に降りました。上流はこんな感じ。左の岩のすき間をよじ登りました。
あそこも左の岩のすき間をよじ登りました。
こんなところを上流へ上流へと歩いて行きます。
大木が引っかかった滝を高巻きます。
かなりアップダウンがあります。
石楠花尾根に逃げるなら正面の斜面なんかいいんですが、まだ谷沿いを歩けそうです。
問題はどこにどれくらいの規模の滝があって高巻きはできるのかできないのかの情報を持っていないこと。不安にかられながらの遡上です。
でっかいミズナラ。そびえ立つ2本の幹は逆立ちした脚みたいです。
快適というわけではないけれど大きな困難はありません。
けれども時折、石楠花尾根を見上げて「ここは登れる」「ここは無理」などと判定を続けています。
上流に滝が見えてきました。
近づきました。
悪谷と悪谷右又窪の出合にかかる滝です。高さは5、6メートルほどでしょうか。もっとあるかな。奥に見えているのが悪谷右又窪右岸尾根です。
滝も左の岩も登るのは無理。右に道らしきものが見えます。
登ってきました。滝の落ち口に道が続いていますが、その手前はちょっと怖いのっぺり具合です。滑り落ちたら二直線くらいで滝壺に沈みます。
無事、落ち口までたどり着きました。
悪谷の下流方向。
悪谷右又窪右岸尾根です。石楠花尾根のあたりをギューッと凝縮したような風景です。
悪谷右又窪の上流方向。
悪谷の上流方向。足元が右又窪との出合です。
さて、やっとこれからが本番です。悪谷で進退窮まらなかったのはツイてました。その勢いのまま取り付きます。が、ザレたかなりの急登です。しっかり靴を踏み込まないとズーッと滑ってしまいます。ひどいところは右足が滑りきらないうちに左足を出す、水面を歩く術みたいな足運びになります。
登ってきました。出合がかなり下に見えます。
登ります。
右側の悪谷右又窪です。
左側の悪谷です。
尾根はキュッとヤセました。
1240mあたりでミズナラが林立する尾根になりました。明るいです。
1270m圏です。左から尾根がにじり寄ってきます。このあたりはぐにゃぐにゃした地形です。
林相は変わりましたがザレた急登は変化なしです。
左隣の石楠花尾根です。
右隣はゴンパ尾根です。
登ります。
登ってきて
ちょっとなだらかになり、足元はザレからやわらかい土になりました。
しばらくおだやかだったんですが岩ゴツの急登になりました。
登ってきて
1480mあたりで岩ゴツの急登は終わりました。
お父さん、お母さん、子どもの糞でしょうか。悪谷右又窪右岸尾根はコツ谷左岸尾根ほどではありませんが、クマの糞がとても多いです。クリのイガやドングリがたくさん落ちていました。クマたちにとってはとっておきのエサ場尾根なのかもしれません。
尾根筋のミズナラやツガを残して、左右はヒノキの植林になりました。
登ってきて
長沢背稜の登山道と合流。1560mあたりです。登山道を横切ってそのまま悪谷右又窪左岸尾根のてっぺんを目指します。
1595mの標高点に到着。悪谷右又窪左岸尾根のてっぺんで長沢背稜との合流点でもあります。これにて悪谷右又窪左岸尾根はおしまいです。ザックを降ろします。
悪谷右又窪左岸尾根てっぺんからの景色です。これは長沢背稜の北西方向。
右に回っています。北方向。
北東方向です。
東方向です。
これは登ってきた南西方向。目が回りました。ウソです。残念ながら景色がいいと言うには無理があります。ペットボトルに詰めてきた玄米茶をグビグビと飲みます。悪谷でペットボトルを流れに落としてしまい、回収に手こずったことなんかを思い出しながら飲みました。
さて、ザックを背負い、まずはビューポイントのハナド岩を目指して長沢背稜を北東へ下っていきます。