奥多摩尾根歩き
イモリ谷左岸尾根

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今回はイモリ谷左岸尾根を登り、登り尾根東面の登山道を下りました。
イモリ谷左岸尾根は石尾根(いしおね)の千本ツツジと七ツ石山の間にある1700m圏をてっぺんにして北東に下り、唐松谷(からまつだに)とイモリ谷の出合にガツンと没している尾根です。
唐松谷は雲取山(くもとりやま)の東面で野陣尾根(のじんおね 富田新道)と石尾根を深くグサリと南北に切り分けていて、長沢谷(ながさわだに)や大雲取谷と徒党を組んで日原川(にっぱらがわ)になります。イモリ谷は唐松谷の中流部で右岸(石尾根側)から細いけれど豊かな水量でじゃんじゃん流れ込んでいる谷です。
イモリ谷左岸尾根は数年前からいつか登ろうと、忘れては思い出し、思い出しては忘れ、忘れては忘れたままになって、ふと思い出して今度こそと意を決しようとすると腰が引けまくって、そのうちにまた忘れてきた尾根です。で、また思い出しました。日帰りで登り下りできる尾根が見つからなくてどうしょうか、と悩んでいたタイミングです。登れたらそれでけっこう、ダメならダメでしょうがない、いいかげんに白黒つけたほうがいいな、と強く思ったのでした。
イモリ谷左岸尾根を歩いた記録はkomado氏(サイト『花とひかり』登りの記録)とモンターニャ氏(サイト『ヤマケイオンライン』下りの記録)の2件しか見つかりませんでした。取付の出合にたどり着くまでがかなりそーとーとんでもなくキビシそうな尾根だということはビンビン伝わります。だからこそ腰が引けまくっていたんですが、現場を自分の目で見て、諦めざるを得ないのか歩けるのか、ついに積年の澱を吹き払うときがきたというわけです。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→日原林道→(50分)八丁橋→(1時間5分)唐松谷林道入口→吊橋→野陣尾根分岐→(2時間5分)唐松谷イモリ谷出会→イモリ谷左岸尾根→(2時間)石尾根の1700m圏ピーク→七ツ石小屋→登り尾根東面の登山道→(1時間50分)[GOAL]鴨沢バス停→JR青梅線奥多摩駅
(7時間50分)
歩いた日 2022年9月4日(日)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→日原林道→(50分)八丁橋→(1時間5分)唐松谷林道入口→吊橋→野陣尾根分岐→(2時間5分)唐松谷イモリ谷出会→イモリ谷左岸尾根


イモリ谷左岸尾根は取付までのアプローチがとんでもなくデンジャラスでした。イモリ谷出合に近いと思われるまあまあの緩斜面を林道から唐松谷に向かってピッケルを使いながらズリズリ下ったら出合のかなり下流。上流には立派な滝がかかっていて水線を遡上するのはとても無理。でもって少し登り返して上流に向かってトラバース(山腹水平移動)したはいいけれどけれどいったいどこをどう下れば出合に降りられるの? みたいなシーンの連続でした。

おはようございます。奥多摩駅前から東日原行きのバスに乗り、終点の東日原バス停に着きました。ほぼ満員だった乗客は川乗橋でごっそり降り、東日原では5人が降車。揺すったら水滴が落ちてきそうな曇天の下、出発です。
日原街道をてくてく歩き、小川谷橋(おがわだにばし)を渡って左折、林道日原線(以降、日原林道)へ。
ヘビがわたくしを通過し、
八丁橋(はっちょうはし)の少し先、天祖山(てんそさん)への登山道を分け、ゲートを抜けます。
日原林道を歩きます。かなり歩きます。ひたすら歩きます。
ヤケト尾根([ヤケト尾根、浅間尾根][ヤケト尾根、オッコシ尾根、日蔭名栗山南尾根])への下降点を通過し、
日がさしてきて
ツバノ尾根への下降点を通過し、
名栗沢橋(なぐりさわはし)を渡り、
バス停から2時間弱でようやく唐松谷林道への下降点に到着。「富田新道・雲取山 唐松谷・ブナ坂」方面の道標には「富田新道以外の登山道は通行しないでください。歩行される場合は細心の注意を払って通行してください。 東京都多摩環境事務所 青梅警察署 奥多摩交番 2021.4.3」と書かれたポスターが下げられています。
ザックを下ろし、軍手を引っ張り出し、ザック横に付けていたピッケルを外します。ペットボトルに溶かした粉末スポーツドリンクを一口飲み、「腹をくくって出たとこ勝負」などと思いながらもやっぱりちょっと腰が引けているのを感じたりして、
日原川の音に包まれながら高度を下げていきます。
唐松谷と長沢谷の出合が見えてきました。あの出合から日原川になります(多分)、長沢谷に架かった吊橋を渡ります。
吊橋を渡ると唐松谷沿いに道がのびていますが唐松谷林道は右上へ。
くの字くの字のそこそこの急坂が続きます。
富田新道(野陣尾根)との分岐点です。直進する唐松谷林道にはロープが張られています。ロープには「通行止 唐松谷林道は登山道崩落のため通行できません。 東京都水道局 水源管理事務所 東京都環境局 多摩環境事務所」と書かれたポスターが下げられています。「細心の注意を払って通行」させていただきます。
日原鍾乳洞近くの梵天岩(ぼんてんいわ)のミニチュア版を通過します。急坂が続きます。
ここが警告されていた崩落地でしょうか。道をたどっていくとなんとなく土砂を乗り越えてなんとなく道の続きに復帰します。
ひとつめの桟道。板の上は滑ります。山側にへばりついて歩きます。
尾根を回り込む桟道。ここも板の上は度胸試しみたいで歩けません。山側の土や岩や木の根っこを歩いていくと
最後の桟道はバラバラでした。
そろそろイモリ谷出合です。唐松谷を見下ろしながらゆっくり歩きます。
こんな桟道もあります。律儀に桟道の上を歩こうとしなければ(そんな人はいないか)巻道があります。
唐松谷に下っていくそこそこはっきりした踏み跡を発見。スマホGPSで確認するとイモリ谷出合は直線距離で120mほど上流。踏み跡は上流に向かって下っています。ひょっとして出合に降りられる踏み跡? などとめちゃくちゃ都合のいいことを思ったりもしました。
やっぱりそんなに甘くはありませんでした。広い斜面に溶けるように踏み跡はすぐになくなりました。しょうがありません。ピッケルでバランスを取りながらテキトーにズザリズザリと下っていきます。
出合か? と思ったんですが違いました。唐松谷の滝です。そもそもこれ以上はロープでもないと下れません。いや、わたくしの場合、あってもキビシイかも。
少し登り返し、テキトーなところでトラバースしました。
唐松谷の滝が見えました。きれいです。しばらく眺めます。ここがゴールなら言うことないんですが、イモリ谷出合はあの滝の上流です。ここからも対岸に渡ったとしても滝を高巻けそうにありません。
また登り返します。かなり登り返したんですが、林道まで戻るのはもったいないのでこんなのっぺり斜面をトラバースして出合に近づいていきます。
どうやら先程の滝を高巻いたようです。トラバースを続けます。
キビシい勾配の小尾根を立木や木の根っこや岩やピッケルにしがみつきながら下ってきた写真はありません。カメラを構える余裕はありませんでした。この草むらは唐松谷に降りられそうな崖の端です。草木の根元をつかみ、土に埋まった根っこを探り、ピッケルを突き立てたり岩に引っ掛けたり、
短めのコンパスを性能の限界まで伸ばして開いて下ってきて
ついに唐松谷とイモリ谷の出合をとらえました。右奥から唐松谷、左奥からイモリ谷です。そして正面が目指すイモリ谷左岸尾根。。水がチョロチョロ流れる小さな谷に降りて越えて水線までまだ10m以上降りなければなりません。
イモリ谷左岸尾根の前に立ちました。

唐松谷イモリ谷出合に立って、[唐松谷下流→イモリ谷→イモリ谷左岸尾根→唐松谷上流→下ってきた唐松谷林道側の崖]を撮っています。
唐松谷をあちらからこちらへ渡りました。
イモリ谷左岸尾根をぐっと見上げます。んー、正面から登るのは無理。
イモリ谷沿いの薄い踏み跡をたどり、尾根の左へ回り込みます。かなり古そうな赤い「林班界標 50|51 東京都水道局 水源林」を超え、
尾根の横っ腹に取付きましたが、足場のもろいとんでもない急登をしのぎにしのぎ、尾根に乗りました。出合を見下ろします。
息を整え、登ります。
右に唐松谷。
左にイモリ谷。
勾配が緩やかになったところで
ピッケルをザックに入れていた杖に持ち替えます。ドロドロになった軍手に虫がわんさかとたかり、ハエに似た虫はぶどうパンのぶどう、レーズンバターのレーズンみたいです。
イモリ谷左岸尾根の後半へ続きます