奥多摩尾根歩き
矢岳北尾根、篠戸山北尾根

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遠征です。またまた遠征です。今回は矢岳北尾根を登り、篠戸山北尾根(しのとやまきたおね)を下りました。矢岳北尾根はそこそこ認知されている名前だと思うんですが、篠戸山北尾根はテキトーな名付けです。
矢岳北尾根は矢岳から安谷川(あんやがわ 川浦谷渓谷)と持小屋沢(もちごやさわ?)という谷の間を北に下って両者の出合あたりに没している長い尾根です。前回、立橋尾根を登ったときにあわよくば下ろうとした尾根ですが、日没で真っ暗になるのがほぼ確実だったので断念した経緯があります。下るのは危険という情報もあったので今回は登ることにしました。
篠戸山北尾根は矢岳から矢岳尾根を北に下った篠戸山からさらにちょっと下った1000m圏の小ピークがてっぺんです。矢岳北尾根とほぼ平行していて、持小屋沢と事上沢(ことかみざわ)という谷の間を北に下り、安谷川と事上沢の出合に没しています。
矢岳北尾根はできるだけ下端から登ろうと目論みました。篠戸山北尾根はあまり情報がなく、中間部の地形がちゃんとイメージができないし、下端で道路に降りることができるのか、うっすらとした不安を抱えての出発です。
コース [START]秩父鉄道武州日野駅→明ヶ指たまご水・大カツラ→(40分)矢岳北尾根取付→矢岳北尾根→585m標高点→820m標高点→(3時間30分)矢岳(1357.9m)→篠戸山(1040m)→(1時間10分)篠戸山北尾根下降点→篠戸山北尾根→(1時間40分)道路→事上沢→(25分)[GOAL]秩父鉄道武州中川駅
(8時間40分)
歩いた日 2022年10月22日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

[START]秩父鉄道武州日野駅→明ヶ指たまご水・大カツラ→(40分)矢岳北尾根取付→矢岳北尾根→585m標高点→820m標高点→(3時間30分)矢岳(1357.9m)


地形図で矢岳北尾根を矢岳から素直に尾根筋をたどると、下端は安谷川と持小屋沢の出合より安谷川のやや上流の「明ヶ指(みょうがさす)の大ケヤキ」のもう少し上流に没しています。取付はここを目指したんですが、大ケヤキの上流へは水に入らないと行けそうにありませんでした。ただ、山腹に踏み跡らしきものを発見。ちょっとデンジャラスな場所はあったんですが、目指した下端のすぐ上に立つことができました。
初っ端の等高線の詰み具合は難儀な登りに違いはなく、地形図は線を4、5本多く引き過ぎていた、なんてことはないだろうか、などと思ったんですが、そんなことはなく、地形図は現場を忠実に描画していました。けれども尾根相は予想と大違い。植林に囲まれて足を滑らしながら黙々と登るんじゃないかなと思っていたんですが、岩稜で始まりました。うれしい誤算です。キビシい勾配を意識せずに高度を上げることができました。
初っ端の岩稜を抜けると展望はあまりないけれど、おだやかな尾根道や思いっきりヤセた尾根なんかもあって、歩いていてとても楽しい尾根です。見の危険を感じる場所もあったような気がしますが、はっきり覚えていないんでそこそこの程度だったんでしょう。

おはようございます。先々週、先週、きょう、御花畑駅で天ぷらそば(460円)を食しました。もう、わたくしの血はそばつゆでできていると言っても過言じゃないよな、などと思っていると秩父鉄道武州日野駅に着きました。電車はわたくしひとりをホームに残して三峰口駅を目指してスピードを上げていきます。
改札口横の「現在地からの所要時間 徒歩で」の案内図。「明ヶ指のたまご水」へはまず「そば処 和味(なごみ)」の駐車場(25分)に向かいます。
待合所でザックから軍手や杖、タオルを引っ張り出して準備を終え、
線路沿いを御花畑駅方向に歩き、大音声で「アブナイ!」と叫ぶ自動音声に驚いて踏切を渡り(地形図には線路沿いの道は線路の反対側に描かれています)、
浅間神社(せんげんじんじゃ)の鳥居を通り過ぎ、
明ヶ指たまご水を目指します。
矢岳北尾根や篠戸山北尾根が見えていると思うんですがよくわかりません。
「そば処 和味」の向かいから安谷川に下って生きます。
途中に「十二天水」という水場があります。めちゃくちゃ冷たいだろうなと思ったんですが飲むとそうでもありませんでした。おいしかったです。
八橋かきつばた園みたいな橋(行ったことないけれど)で安谷川を渡り、
くねくねと歩いていきます。
キャンプ場(跡?)なんかを過ぎ、持小屋沢を鉄橋で渡って右へ。
安谷川に降りると「明ヶ指のたまご水」の案内板が打ち捨てられていました。「硫黄分」「養生」「冷え性」「鳩や鹿」などの文言が読み取れます。また「注」として「絶対手をふ」などと書かれています。
「明ヶ指のたまご水」には「明ヶ指の卵水」と墨書された古そうな柱が立っていました。一般名称が「卵」から「たまご」に変わったようです。誰がいつどうして変えたんでしょうか。たまたまでしょうか。
たまご水です。湯の花みたいな白い糸状の沈殿物が漂っていました。指ですくってなめてみると硫黄臭がして、まずい、です。
たまご水から安谷川のほんの少し上流に「明ヶ指の大カツラ」が見えます。「県内最大のカツラの木(巨木県内第二位)」と書かれた標柱が立っていました。標柱はもうすぐひこばえに完全に取り囲まれそうです。
大カツラから安谷川の上流を見ると、川沿いには歩けそうにありません。最下端部からの取付きはちょっと無理。残念。ただ、山腹に踏み跡らしきものが見えました。
テキトーに這い上がってくると確かに踏み跡です。朽ちて苔むした桟道も見えます。糸ようじのほうがマシ、みたいな桟道ですが。
踏み跡は薄くなったりしながらもずっと続き、
ややデンジャラスな小さな谷の下部を避け、山腹を高巻いたりもします。
矢岳北尾根に乗りました。尾根の下端方向です。ここを登ってくることは難しそう。ただの崖です。
登ります。ザレ気味のキツい急登ですが、手がかり足がかりには不自由しません。
すぐに岩稜になりました。
這い上がります。
登ってきて立ったのは400m圏。
振り向くと岩なしの急登です。
尾根上に倒れた大木に沿って登っていったんですが、太い根元部分をどうしてもまたぐことができず、屈辱の撤退。下ってきてここをまたぎます。
登ってきて
勾配はややゆるやかになりました。ヤセ尾根です。
あのピークで左から登ってきた尾根と合流して右に小さく曲がります。
合流するととてもおだやかな尾根になりました。左は雑木、右はヒノキの植林です。
登ってきて
550mあたりで雑木と植林の位置が反対になったんですが、この先も雑木と植林の位置はころころ変わります。
585mの標高点あたりを通過します。アセビが茂っているくらいでとくになにもありません。
標高点からちょっと下ると左後ろからそこそこしっかりした道が登ってきましたが尾根を巻く理由はありません、右の尾根上へ。
縦割れした大木とすくっと立っている大木の根元に「埼玉県」の刻印がある石柱がばらばらと置かれていて、
尾根のすぐ下には祠の残骸がころがっていました。
スギやヒノキに囲まれたおだやかな尾根歩きが続いています。
ぐにゃりと曲がった「火の用心 県営林 埼玉県」の標識を通過し、
ポカリと開けた場所を通過します。
道すがら。
急登が始まりました。
登ってきて
820mの標高点あたりを通過します。なにもありません。
890mあたりの小ピークです。右からせり上がってきた尾根と合流します。
ぐぐぐーっと登っていきます。
登ってきて
もう少し踏ん張って
おだやかな尾根になったんですが、
すぐに短いけれどキツい勾配になって、
ふと右下を見ると、ヒュッと吸い込まれそうな地形でした。
1000m圏。「いつまでもあると思うな尾根と金」です。
なくなりそうな尾根からの眺め。
これも。熊倉山[熊倉尾根 聖尾根]や宗屋敷尾根(そうやしきおね?)なんかが見えている思うんですがよくわかりません。
これも。
落っこちないうちに先に進みます。その前に
怖いもの見たさで腕を伸ばして撮影。腰が引けてがけ崩れの底は撮れませんでした。
大岩を通過し、
なんだか尾根が明るくなりました。
直径20cmくらいのとぐろを巻いたワイヤーを通過します。
おだやかな尾根歩きです。
奥は水なし、手前は水ありのヌタ場。サウナと水風呂みたいな関係でしょうか。多分、違います。繁盛しているようです。
尾根は左にカーブしていきながら
ヤセました。
うっすらと紅葉。
登ってきて
道は大岩を巻いて尾根下を歩くようになったので途中から尾根に這い上がり、
大岩のほうをちらりと眺め、危なそうだし展望もなさそうなので尾根の続きを歩きます。
そこそこ勾配のキツいヤセ尾根にワイヤーが這っています。
うっすらと紅葉。
尾根上にヒノキがニョキニョキ立っています。
うっすらと紅葉。
1150m圏です。できるだけ左を歩き、
尾根に復帰。
南東方向が少し開けていました。どこが見えているのでしょう。
右から登ってきた尾根(多分、979mの標高点のある尾根)と合流します。尾根の形が大きく波打ち、かなりの急登になりました。
斜上してきて
斜上します。
尾根に乗りました。キツい登りでした。
勾配は落ち着き、
大岩にぶつかります。
基底部を左へ回り込んでいたんですが、
途中で岩のてっぺんを目指すことに。
登ってきました。
うーむ。とくに展望がいい、ということもなく、振り向いて進みます。
短い距離ですがギッチギチに密生したアセビを突破してきて
尾根に並んだ岩に沿って登ります。
登ってきて
登ります。左右から尾根が集まり空が広がっています。矢岳山頂はもうすぐのはず。
登ってきて
矢岳尾根に乗りました。
右にちょっと歩くと三等三角点(標高は1357.89m、基準点名は南山。南にある山ということでしょうか)、
さらにちょっと歩くと山名板が木にくくりつけられていました。これにて矢岳北尾根はおしまいです。
展望はほぼなし。矢岳は遠くから眺めると矢尻のようにビシッととんがった山容ですが、山頂は地味です。古い書籍には矢岳は八嶽と書かれていますが、「八」という字の形から名付けられたんじゃないでしょうか。
さて、次は篠戸山北尾根です。矢岳尾根を北へ下り、篠戸山を目指します。