奥多摩尾根歩き
石楠花尾根


今回は石楠花尾根(しゃくなげおね)を登り、長沢背稜(ながさわはいりょう)を経てヨコスズ尾根を下りました。
石楠花尾根長沢背稜の坊主山(悪谷ノ頭)から南西に下って酉谷と悪谷(割谷)の出合に没している尾根です。石楠花尾根は3年半ぶりの2度め。過去の記録を見直してみたんですが記憶が鮮やかに蘇る、なんてことはなく、初っ端のとんでもない急登だけははっきり覚えているものの、ほぼまっさらな気分で尾根に取付きました。
ヨコスズ尾根長沢背稜の天目山(三ツドッケ)をてっぺんにしてバス停や郵便局なんかが集まっている日原の集落に向かって下っています。ヨコスズ尾根は何度か登ったり下ったことがあり、尾根の雰囲気はそこそこわかっています。滝入ノ峰(たきいりのみね)あたりから登山道は尾根の東側を下っていて、コースタイムを考えると十中八九、下山時は薄暗い山道を歩くことになります。下手するとヘッドライト点灯です。
完全に日が落ちても安全に歩くには七跳尾根(ななはねおね)を下って小川谷林道に降りるのが吉。坊主山から七跳尾根の分岐に着いた時点で小川谷林道に降りるかどうか決めよう、そんな腹づもりで久々の日原の懐深くへの山行です。長沢背稜ヨコスズ尾根はさらりと記述します。
コース JR青梅線奥多摩駅→[START]東日原バス停→小川谷林道→(2時間)小川谷林道終点広場→小川谷左岸登山道→(50分)三又→石楠花尾根→(2時間30分)坊主山(長沢背稜)→(1時間30分)一杯水避難小屋→ヨコスズ尾根→(1時間30分)[GOAL]東日原バス停→JR青梅線奥多摩駅
(8時間20分)
歩いた日 2022年11月19日(土)
※赤い線が歩いた軌跡です。ただ、正確無比なものではありません。あ〜、そ〜、このあたりを歩いたんだ、程度の参考にしてください。

石楠花尾根の初っ端は記憶通りの急登でした。酉谷と悪谷の出合からいきなりのとんでもない急登です。足元はザレザレに始まってやがてガラガラに。急登が終わると岩がちなヤセ尾根になったりもして、シャクナゲの小さな群生を過ぎると葉っぱがすべて落ちた木々を背負った幅広の明るい尾根になったりもします。シメは坊主山山頂直下の急登。石楠花尾根はなんといってもキビシい急登が印象に残るんですが、けっこう変化のある尾根だったんだな、といま思い出しています。

おはようございます。JR某駅で奥多摩のトップガンMさんと合流し、あーだこーだの文字面通りの四方山話。四方八方を山に囲まれた東日原バス停に着きました。
稲村岩と鷹ノ巣山に続く稲村岩尾根。まだ入山禁止は解けていません。小川谷橋を渡って右へ。日原街道(東京都道204号日原鍾乳洞線)の終点から林道小川谷線に進みます。
小川谷下段歩道から鳥居谷右岸尾根を登るというMさんと下段歩道の入り口(人形山東尾根、小川谷上段歩道の入り口でもあります)で別れました。
翌日、「下段歩道は改修され、すこぶる良い道でした」「改修は鳥居谷の少し手前まででした。通行止めのロープの先の木橋は新調され、その先のネットはなくなり、コンクリートの土留めの上を歩けました。でも、その先の尾根を回り込むと、酷い道でした」との情報をいただきました。
道すがら。秋の終わりの始まりといった風情です。
バス停から約2時間、林道終点広場に着きました。休憩後、左奥の旧登山道に進みます。
土砂がのった擁壁の上を歩きます。いきなりちょっと緊張します。
擁壁を過ぎてすぐです。終点広場から三又までの旧登山道でここがいちばんこわいと思う崩落地です。ロープをつかんで杖で落ち葉を払い落としながら段差のある狭い足場を探りながら進みます。左はロート状に切れ落ちています。
ズズッズズズッと渡ってきました。
路肩がほとんどないのっぺり道に落ち葉がのっていて、かなりスリルがあります。
第2の崩落地。倒れた大木をくぐります。
第3の崩落地。Mさんが設置したロープで沢に降ります。
崩落地を見上げます。水量が多いととてもきれいな滝になります。
三又近くの緩斜面。Mさんから、ここから小川谷に降りて小川谷を渡渉し、対岸の下段歩道に這い上がるルートをつくったと聞きました。流れに石を置き、下段歩道に這い上がれるロープを木の根っこに結びつけたらしい。
対岸の崩落地。小川谷下段歩道が分断されています。崩落地の下流側にロープが設置されているはずですが見えませんでした。
右からの酉谷と正面奥からの滝谷(大京谷)がここで合流して小川谷になって左へ流れていきます。静寂って無音じゃないと思います。
古い道標を過ぎ、酉谷の上流に向かいます。この道標が三又の標識だと勝手に思っています。
すぐに左から流れてくる酉谷と右から流れてくる悪谷の出合です。そして正面が石楠花尾根。校庭の築山(いまどきあるかな)みたいに見えますがとんでもない急勾配です。
酉谷の酉はトオリであって秩父と日原の通り道からきたということが『多摩川源流部の沢・尾根・淵・滝・小字等の地名と由来に関する調査研究 奥多摩編』(2005年 中村文明 多摩川源流研究所 所長 著 財団法人とうきゅう環境浄化財団 発行)に書かれています。悪谷については「(酉谷との)出合いから150m近く両岸が絶壁の谷が続く。滝有り淵有りの悪場から、この名前が付いた。別名は割谷(ワレタニ)。大地が真っ二つに割れたような地形からそう呼ばれた」とあります。ちなみに滝谷は「地元では、大京谷と呼ばれている。大小無数の滝が続くことから、滝谷とも呼ばれる。下滝は、落差15m、上滝は落差50mの見事な滝である 」と書かれています。
また同書は三又を「大京谷、酉谷(中沢)、悪谷の三つの谷を意味する」と解説しています。小川谷の名前については記述はありません。「小川みたいな谷だから」じゃなくてなにかグッとくる物語はないでしょうか。

酉谷と悪谷の出合に立って、[酉谷の上流→石楠花尾根→悪谷の上流→酉谷の下流]を撮影しています。
出合から大きなくの字ひとつでできるだけ勾配を逃しながら登ってきました。出合がよく見えます。
ザレた急登が続きます。
獣? 人? 落ち葉をひっくり返した踏み跡が酉谷側から登ってきました。ちょっとたどってみたんですが尾根を離れる前に早々に離脱。
登ってきて
岩が点在する尾根になりました。急登はやみません。
ザレからガラに変わった急登に歯を食いしばって
右から登ってきた小尾根と合流。1180m圏です。
合流すると左に方向転換して登っていきます。ここでようやく急登がゆるみました。
1205mの標高点あたりを通過します。とくになにがあるわけではありません。
右手に見える稜線はゴンパ尾根。左端は七跳山でしょうか。またぞろ急登が始まりました。足元はガラからゴロに。
明るい尾根です。が、すでにそこそこ衰弱しています。
そこそこの急登はやむことはなく
じんわりじんわり登っていきます。
1320mあたりから眺めた左手の景色。タワ尾根の向こうに長沢背稜が見えています。
行く手に空が広がってきました。葉っぱをすっかり落としたミズナラが林立しています。ムーミン谷のニョロニョロみたい、などと思いながらニョロニョロよりゆらゆらと急登にあえぎます。
大木を通過します。
登ってきて
ヤマタノオロチみたいな大木を通過します。立てかけた杖は影になって見えていません。撮影は貴重な休憩時間です。
1450m圏のピーク。地形図で小さな丸がくるりと描かれている場所です。
登ってきて
右から登ってきた尾根と合流します。地形はぐにゃーとしています。
アセビが濃くなってきて
岩がちになったりもして
ウトウの頭の南面を思い出しながらひーひーと登ってきて
登ります。行く手に青空が見えます。ちょっと前に見た青空は1450m圏のピークが縁取った空だったけれどあそこはどうなってるんでしょう。
ヤセ尾根になりました。左の切れ落ちた斜面にシャクナゲが群生していました。シャクナゲを見たのはこの一帯だけでした。
左手に日向谷右岸尾根(ひなただにうがんおね)が見えます。あちらにも動かないニョロニョロが生えています。
岩がちなヤセ尾根を登ります。
行く手の青空がだんだん
大きくなってきます。あれっ、そういえばちょと前の青空はなんだったんでしょう。
今度の青空は左から登ってきた小尾根が切り取っていました。小尾根の左は切れ落ちています。
小尾根を右へ。進路は変わりましたがそこそこの急登は変わらず。
登ってきて
長沢背稜の登山道(水源林巡視路)にぶつかりました。
登山道を横切り、そのまま坊主山のてっぺんを目指します。
かなりキツい登りから
このアセビの茂みを抜け
さらにぐぐぐっと登ってきて
坊主山(悪谷ノ峰 1640m圏)の山頂に到着です。これにて石楠花尾根はおしまいです。
山頂から北方向の景色。
東方向の景色。
南方向の景色。
西方向の景色。ちょっと休憩します。
ヨコスズ尾根七跳尾根か、うーん、林道を歩く七跳尾根ではなく東日原バス停までほぼ山中の道を歩くヨコスズ尾根を選択。ちょっぴり急ぎぎみで歩けば真っ暗になることはないはず。
長沢背稜の尾根上を西へ。かなりの急降下です。
登山道に移り、
七跳尾根を乗り越します。
連なった桟道を歩き
ハナド岩です。正面。ほぼ南方向。
右方向。
左方向。すぐ手前がハンギョウ尾根でその向こうにこれから下るヨコスズ尾根が見えています。
ハンギョウ尾根を乗り越します。
一杯水避難小屋から右に折れ、
ヨコスズ尾根を下ります。
ヨコスズ山の山頂を見上げながら通過します。
日は傾いてきました。
登山道は尾根の東側をぬっていきます。
滝入ノ峰の山頂直下を通過し、左手が植林になり、こんな道がえんえんえんえんと続き、
あの道標で植林は途切れ、
尾根上をちょっぴり歩きますが、
すぐに植林帯に入ります。この道標で登山道を離れて作業道へ。
整備された道をドタドタと下り、
「巨樹コース」に合流。これにてヨコスズ尾根はおしまいとします。左へ下り、
壊れた扉を抜けると
旧日原小学校に出ます。
校庭を横切り、かつての通学路を3、4分下ると
東日原バス停に到着です。17時30分発のバスに乗ります。日はとっぷり暮れました。
山の神様、地権者の皆様、きょうもありがとうございました。石楠花尾根の急登をなんとかしのぎ、無事に戻ってくることができました。久々の日原の懐深くの尾根歩き、楽しかったです。 
またよろしくお願いします。